前回の検証で常時OC用の最適設定は把握できましたが、シングルスレッドのCPU性能を活かせない欠点とアイドル時の消費電力が高いことが気になります。そこでマザーボードのVIDオフセットを利用して消費電力と性能のバランスが一番良いところを探してみます。
検証環境
前回からハードウェア構成は変更なし。違いは設定をBIOS(UEFI)上で行ったこと、CPU負荷を一定時間かけるためにCinebenchR20を止めてHandbake1.2.2でフルHDのアニメのエンコード(presets:Fast 1080p30)に試験方法を変更したことの2点です。
Handbrake 1.2.2で10分間エンコードした時の状況
室温23~24度でVIDを以下の条件に変更し、svi2tfn(CPU電圧)/EDC(ピーク時の電流上限)/CPU Tctl(CPU温度)/平均クロック/CPUtemp(マザーボードで検知しているCPU温度)/CPU core voltage(マザーボードから供給するCPU電圧)/CPU power(CPU単体の消費電力)/VRM output Current(VRM負荷(A))の他、アイドル時の消費電力を取得しています。
BIOS VID設定 |
CPUのセンサー値 | M/Bのセンサー値 | ワット チェッカー |
備考 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
svi2tfn | EDC | Tctl | 平均 clock |
CPU temp |
CPU core voltage |
CPU power |
VRM output Current |
idle 消費電力 |
||
V | V | A | ℃ | MHz | ℃ | V | W | A | W | |
Auto | 1.275 | 187.6 | 93.3 | 3998 | 91.7 | 1.36 | 149.4 | 111 | 38 | OCのサーマルスロットリング発生 |
Auto-0.05 | 1.251 | 188.3 | 90.3 | 4006 | 89.4 | 1.329 | 140.7 | 106 | 37 | |
Auto-0.10 | 1.22 | 189 | 85 | 4028 | 84.6 | 1.29 | 130.7 | 102 | 37 | |
1.2 | 1.200 | 189.7 | 84.2 | 4028 | 83.8 | 1.284 | 129.7 | 101 | 43 | |
1.2※ | 1.200 | 192.8 | 83.9 | 4050* | 83.6 | 1.273 | 128.6 | 101 | 73 | クロック固定 |
Auto-0.1125 | 1.206 | 190.8 | 83.4 | 4035 | 83 | 1.276 | 129.2 | 100 | 37 | |
Auto-0.125 | 1.196 | 189.9 | 83.4 | 4037 | 82.9 | 1.265 | 123.9 | 98 | 36 | アイドル時に不安定 |
1.175 | 1.175 | 190 | 80.5 | 4044 | 80.1 | 1.244 | 120.7 | 97 | 42 | |
Auto-0.15 | – | – | – | – | – | – | – | – | – | OS起動中にエラー |
考察
RYZENのPBO(デフォルト)はCPU負荷にあわせて動的にOCされるためクロックは常に変動するのですが、Autoの場合平均クロックが4GHzを下回っています。その時のHWiNFOのグラフを見てみるとクロックが随分と乱高下しCPU Tctlが95℃弱を維持していたのでサーマルスロットリング的な挙動になっていたようです。
そこからAuto-offsetで電圧を絞っていった結果、Auto-0.1125が安定して消費電力を落としつつ平均クロックをデフォルトより40MHzほど高められるバランスの良い設定と判明。なおAuto-0.125は低負荷時に電圧が下がりすぎるようでブルースクリーンが度々発生、Auto-0.15は起動中にブルーになるため検証不可でした。
ちなみにVIDを固定にすると高負荷時の消費電力こそ絞れるものの、低負荷時でも同じ電圧がかかるためアイドル時の消費電力がAutoより若干高くなります。さらにCPUクロックも固定にすると低負荷時でもOCされてアイドル消費電力が倍増する結果に。これはイケてないので個人的には無し。
バランスはPBO+電圧Auto-offset0.1v程度が一番良いかも
前回、常用クロックは手動4.0GHzと宣言したばかりですが、4GHz前後でよければ電圧Auto-offset0.1vの方が低負荷~高負荷まで満遍なく効率が良さそう。ということでこちらを本採用することにします。